システマティックな論考ではなく、どちらかといえばエッセイに近い
雑駁な文章で、著者自身が後書きで解説しているように、本書は
反論術というより、反論の応酬がいかに莫迦らしいか、そのために
労力を費やすことがいかに無駄であるかを知るべく「アイロニカルに
距離を置いて見る」、いわば反・反論術といった内容になっている。
まともな議論が進行するためには(1)不当な野次が飛ばない「場」で
(2)時間の制約を受けず(3)結論を導ける明確な論点をはっきりさせ
(4)これらに合意できる冷静沈着なジャッジやオーディエンスの存在が
欠かせない。だが、ネットというメディアにおける議論では、
こうした必要条件がひとつも成立しないのだ。
本来なら邪道にあたる「見せかけだけの論争」「人格攻撃」といった
言葉=論理の扱い方が「ネット時代の反論術」としては最も実用的で
有効性をもちうるというアイロニー。著者が本書を世に問うたのは
そのアイロニーの徹底か、それともアイロニーの転覆が狙いだろうか。