仕事上の興味があって手に取った。著者は最近テレビでもよく見かける官僚出身の大学の先生。
グーグルに象徴されるネットの巨大化が、既存のビジネス、とくに新聞、雑誌、テレビなどのマスメディアと、音楽、書籍などのコンテンツ産業に大きな痛手を与えていて、ここ2年ばかり議論百出の状況だが、本書はその現象を「国益」という観点から論じようと試みている点が新しい。しかし結論からいえば残念ながら期待外れ。
本書の論点はおおきく以下2点である。
・ネットの「タダ」文化によりジャーナリズムとコンテンツ、ひいては文化が破壊される
・外国=米国のITプラットホームが独占的に日本の富を吸い上げてしまう。
しかし、ネットによる既存ビジネスの破壊は日本よりも米国のメディアのほうがずっと被害が大きい。米国が一方的に他国から富を奪っているというのもちがう。消費者がいくつもある選択肢を自由に選びとった結果、そうなったに過ぎない。マイクロソフトと米国司法省とのバトルは記憶に新しいが、米国は自国の基幹産業を守るのではなく、むしろ「独占しすぎていてフェアでない」として解体しようとした。著者のいうような、外国のプラットフォームを使ったら必ず国産のプラットフォームも使うように法律で義務付ける(p130)、などという発想とは正反対なのである。
中国は自国の統治に不利な情報を流すグーグルを自国から追い出した。そういうレベルでの日本の「国益」とは何なのか、著者のいう「国益」とは何か、本書には何も提示がない。
マスメディアの置かれている現状については、
次に来るメディアは何か (ちくま新書)が網羅的でいまのところいちばんよい。グーグルブックスをめぐる著作権上の問題については
著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書 527A)が考察が深く、お勧めできる。