昨今、インターネット上でのコミュニティの出現は、企業のマーケティング活動の全般に大きな影響を与えるのではないか、という大きな問題意識が展開されている。本書もそのような認識の上に成り立つものであり、ネットコミュニティをマーケティング戦略に取り込んでいくことの重要性を主張するものだが、本書は特に、ネットコミュニティ上の消費者行動に注目し、その特徴を生かしたプロモーションを考えることの重要性を主張することに重点が置かれる。本書で取り上げられるケースも、コミュニティを利用して如何に製品が普及していくか、というプロモーション的視点からケースの解説が行われている点が特徴的。しかし、その内容は、プロモーション的視点のみではなく、ネットコミュニティのもう一つの重要な視点、製品開発の側面などにも多少触れられることになる。さらに本書の優れた点は、紹介されたネットコミュニティを、著者独自の視点・理論枠組で位置づけることを試みている。その枠組は、ネットコミュニティを物財購入時における消費者の情報探索源として捉え、ネットコミュニティ上でやり取りされる情報には信頼性と包括性を持っている必要があることが主張され、それらを規定するものとして、オープン性とコミュニケーション濃度という軸を抽出し、この2軸を利用してこれまで紹介されたネットコミュニティを位置づけるのである。
本書は、このように、ネットコミュニティを消費者の購買行動の情報源として位置づけるところに特徴があり、本書を通じて一貫している点であるが、そのため、次のような問題も発生していると考えられる。1.ネットコミュニティは記述の通り、製品開発に大きな影響を与えつつあるが、今後この点を中心的に取り上げる必要があるだろう。2.この問題に関連して、ネットコミュニティは、消費者と製品開発を一緒にできる手段となる可能性が指摘されている。この点に関する言及が少ない。3.ネットコミュニティを購入時における消費者の情報探索源と位置づけているために、ネットコミュニティが既に存在していることが前提となっている議論が中心である。そのため、どのようにコミュニティが出来上がるのか、についての言及が少ない。