本書は「ネットカフェ難民」という言葉を生み出した著者が、テレビでは伝えきれなかった舞台裏を記した手記であり、最底辺に位置する人々の現実が克明に描写されたドキュメンタリー作品でもある。一般に、裕福で両親も健在という恵まれた環境にある人は、「住所も定職もなく、ネットカフェで寝泊まりしている人がいる」などという話を聞くと、「それは偏に本人の努力が足りないからで、自業自得ではないか?」と、深く考えずに口にすることが多い。しかし現在の日本の社会では、保証人がいなければアパートを借りることもできず、住所が無ければマトモな職にも就けないというのが現実だ。もし何らかの事情によって親族の支援を受けられなければ、誰もがネットカフェ難民になり得るし、一度その状況に陥れば、そこから抜け出すことは容易ではない。そうした社会的な病理を、本書は実例を挙げながら具体的に指摘している。また、ドキュメンタリー放送後の追跡取材についても、かなりのページ数を割いて記されているので、興味のある人はご一読されたい。