筆者もあとがきで書いているように、本書では、近年様々なところで
社会問題としても取り上げられる「ネットいじめ」を中心に、データや
引用を多く用いて書き上げている。ネットいじめを包括的に捉えるために、
ケータイ文化や、学校文化、キャラ問題、ゾーニング、プロフなど、
周辺のことにもふれているのも本書の特徴である。
ネット掲示板に誹謗中傷を書かれて自殺事件まで起こったりすることで、
ネットいじめの温床になっている「学校裏サイト=悪い文化」という
風潮に対しては、データや引用を用いることで、客観的に事態を把握
する必要がある旨を主張する。確かに「可視化」される点が違うものの、
今までも起こっていたいじめと本質的にそれほど大きく相違するもの
ではない、という旨の主張を投げかける。
しかしながら、ネットいじめは、ネットを使ったものであるが故に、
書かれた内容がずっと残ってしまうこと、そしてそれが何度も人(第三者
も含めて)に見られることがあり、そしてその「匿名性」は今までの
いじめの「隠れて行う」匿名性とは明らかに本質的に異なる、といった
「ネットいじめ特有」のことについては十分にふれらていないことは気になった。
書いてある内容については、各人で感じるところが異なるであろうが、
全体としてよくまとめられており、なるべく中庸的にネットいじめと
その周辺の事態を見ようという筆者の姿勢が窺える本である。