近年ニュースを騒がせて止まない幼児虐待だが、攻撃的な暴力と異なり、育児を放棄するといった形で子殺しに至る「ネグレクト」について、この本は他に類を見ないリアリズムに満ちている。
2000年に起きた事件を3年半という月日をかけ追求して行った著者が、やはり一人の母親として、育児の苦しみや喜びを現実に知っている身だからこそ、ここまで真実に肉迫できたのではないだろうか。
私も就学前の幼児を二人抱える母親だが、聞き分けのない子供に対して何度も、カッとなって衝動的に手をあげた事がある。
若い母親が子供を虐待すると報道されれば、知ったふうな男達がともすれば大家族復帰を声高に唱えるが、これはそんな単純な問題ではないのだ。
現に、私は姑と完全同居しているが、むしろそれがストレスになり、やり場のない怒りが子供に向かってしまう事が多々あった。
段ボールに娘を入れて餓死させた母親も、姑は積極的に彼女の育児に干渉していた。
おそらく、現在進行形で育児に関わっている若い母親の半数以上は、核家族・大家族のどちらでも、この事件の当事者「雅美」の気持ちが、程度の差こそあれ、悲しいことに理解できてしまうのではないだろうか。
それでも虐待に至らずに済んでいる母親達は、私を含め、皆、必死で自分と闘っているのだ。