かつて高校生のときにCSで見て以来取り付かれて、アメリカからVHSまで輸入した『パリところどころ』が待望のDVD化です。
『パリ〜」の中の一話である『北駅』一つを見るためだけにこのDVDを買っても損はないと思います。
リュミエールに始まる初期映画がアトラクションというもっぱら身体的な楽しみとして消費されていたのに対して、古典的ハリウッド映画が物語をそこに導入し、映画の枠組みを変えた、とされています。そのハリウッド映画をサスペンスという視点、すなわち画面に現れない要素で受け手が心理的に揺さぶられる、という点の導入によって発展させたのがヒッチコックであるとされています。ヌーベルヴァーグの作家たちはヒッチコックの影響を色濃く受けている人が多いのですが、とくにこの『北駅』は影響以上にヒッチコックを超えていると言えます。『サイコ』で試みられた「受け手と画面の中の境界線をぶった切るようなカメラ視線』が、『北駅』ではより直接的に試みられ、実験的であるだけでなく、題材にもぴったりの手法となっています。
小難しいことをいろいろ書きましたが、現在の映画に慣れている人にとってはこれ以上のサプライズはないと思います。何よりも身体的に映画を感じられるという体験をリュミエールの映画以上にできるはずです。「アトラクションとしての映画」を現代人が感じられるのならばこの価格は安いでしょう。