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6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
雨を描くということ,
By ピュア (東京都港区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ヌードの夜 ニューマスター・デラックス版 [DVD] (DVD)
雨を描くということは、なかなか難しいようだ。黒澤明は、「七人の侍」で墨を混ぜた雨を降らせたという。 リドリー・スコットは、「ブレードランナー」で近未来の酸性雨を見事に表現した。 石井隆は、劇画と同様に、ネオンに煙るじっととした雨を描けるような稀有の監督である。 それにしても港で車が河口にダイビングし、車に乗った紅次郎が名美を救い出すシーン。 このために竹中直人と余貴美子はダイビングスクールに通ったらしい。そのあとの コンクリート管の上を跳ねて消える名美の姿と合わせ、日本映画史に残るシーンだと思う。 若い椎名桔平の切れ味も良い。 最近すっかり丸くなった根津甚八の唐十郎作品「任侠外伝 玄海灘」の頃を思い出させた。
2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
時代に沿った作品,
By
レビュー対象商品: ヌードの夜 ニューマスター・デラックス版 [DVD] (DVD)
「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」から遡ること17年、1993年の作品である。現在、話題作には必ず顔を出していると言ってもいい余貴美子が注目されるきっかけになった作品でもある。「愛は惜しみなく奪う」を見た直後でもあるので、正直言ってインパクトには欠けた。いずれも「キネマ旬報」のベストテン作品とはいえ、世間的な評価からすれば「ヌードの夜」の方が高いことは言うまでもないが、いずれも同時代性が要求される作品なのかもしれない。 とっくに鑑賞済みの作品だと思っていたが、改めて見てみると記憶に残っているシーンがない。私自身、働き始めて数年が経ち、映画やビデオの鑑賞数が落ちていた時期だったのだ。 93年といえばバブル経済の崩壊直後ではあるが、まだ社会には余裕があったらしい。村木=紅次郎(竹中直人)、名美(余貴美子)、仙道(椎名桔平)らの愚かさや狂気も、「愛は惜しみなく奪う」のそれに比べればまだまだ甘いという感じ。また、現在の余貴美子と名美を重ね合わせてみるせいか、村木が名美に惹かれていく心情がピンとこない。とはいえ、公開当時に見ていれば違った印象を受けたに違いない。「花と蛇」や「人が人を愛することのどうしようもなさ」を見たときのような肩すかし感はなかった。
11 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
石井隆の根幹,
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レビュー対象商品: ヌードの夜 ニューマスター・デラックス版 [DVD] (DVD)
余貴美子さん演じる名美は根津甚八さん演じる男の横暴に愛想が尽き果て、もういい、もう別れてしまおうと決心して無謀な完全犯罪を企てます。そこに巻き込まれた代行屋の竹中直人 さんがいつしかこの名美に強く惹かれてしまい、どうにかして彼女を救えないかと悪戦奮闘 するお話です。幾つかの“人が人を愛する想い”が並行して絡み合いながら物語を綾織るので すが、結局のところこの映画も他の石井作品と同じように “記憶の鎖”にがんじがらめになっ て幕を降ろすことになります。 現代を生きる女性にとって男なんて幼稚でメンドクサイ存在は、実際のところは居ても居なく ても平気なのかもしれません。失恋や離婚、伴侶との死別を経た後、決して過去を振り向かず に歩いていけるエネルギッシュな存在ですよね、女性って。抑圧されてきた本来の自分らしい 自分を取り戻し、はつらつとして人生を謳歌する、真っ向から日常をとらえて闘ってもいく。 そんな“生きる力”を面前とすると素直に敬服してしまいます。素敵だなと思います。しっか りと歩道を踏み締めて歩いていく細くしっとりした背中と髪に目を細め、声援を送りたくなる ことがしばしばあります。これに対して石井監督の映画に描かれる“名美”というおんなはど ちらかと言えば古風で、気持ちを整理するのが滅茶苦茶に下手です。その点を突いて男性の 勝手な理想像を追い求め過ぎている、見ていてイライラすると打ち明ける方もいます。 しかし、わたしみたいな優柔不断で不器用な者には己のこころを映す鏡のように感じられて、 その試行錯誤を繰り返していく“揺れる思い”にかえって落ち着くんですね。私生活でもそう いった人の方が性別を越えて交感を覚えます。石井監督もそうなんでしょう。常に主人公は 内省的で、誰もが、悪党ですらも思慮深く真面目です。“女々しい”という言葉は今では誤解 を招きかねない表現ですが、そうなんですね、石井隆の男もおんなも本当にどうしようもなく “女々しい”し、どこまでも生真面目に性愛を捉えて悩みます。 遠くに別れて行ってしまったはずの“あいつ”が、どこまでも名美につきまとって離れない。 それをブラックな笑いをともなう“現象”として映画は描くのですが、当然ながら彼女 “名美”の深層心理を石井監督はうまく顕現しているのですね。“忘れられない、別れられな い”という思いを抱き、“あいつへの憧れ”を最後にそっと囁いて、名美は海へと向かって 走ります。なんて不器用で情けないおんなかと思います。裏表を作れない素直すぎる人間の 哀れが滲みます。 打算的な恋愛しか出来ないくせに本当はピュアな人、胸の奥に繊細なこころの洞窟を持ってい る人ほど、この雨降る埠頭のシーンに気持ちを鷲掴みにされると思いますし、全篇に渡る光と 影の奥深さに胸打たれるでしょう。最近の裸体乱舞の石井作品だけを観て、それを鵜呑みにし てしまうと勿体ないです。『ヌードの夜』に在る魂の軌跡こそが石井隆の根幹だと感じます。 未見の方は絶対に観たほうがいいに決まっている、そんな傑作だと信じています。
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