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あらすじだけを書くと随分メロドラマのようだ。だが、読んだ感触は全く違っていて、もうすぐ死んでしまう、という主人公の不安定さと登場する老婆や若者の不安定さが奇妙にシンクロしてそうっと関係が培われていく。そのそろそろ、ゆらり、とした感じこそが「ヌルイコイ」という所以なのだ。
中途半端なことをヌルイというのなら、このタイトルのヌルイは、ちょっと違うだろう。不確かなものに囲まれて、やっとわかる確かなもの。著者が伝えたいのはヌルイ水の中でちかっと痛みを感じるような熱なのかもしれない。
「相手の不機嫌に慣れ、傷つくことに慣れ、諦めることにも慣れた。芸能マネージャーをしている夫は多忙で、ほとんど顔を合わせることもない。待つことをやめ、期待することをやめ、考えることをやめた。」
つまり、女は生きることをやめたとき、あんなふうに囚われてしまうんだ。理不尽な相手でも、理不尽な相手だから、嵌りこんでしまう。
彼女は迫る「死」を受け止め、それを夫に伝えられるようになったという事実が更に自分自身が「死」を受け止められているという認識となり、やめていた「生」を再び生き始めたのだ。だから、あの囚われから決別したのだ。
恋愛小説は好んでは読まないのだけど、
恋愛なのか、人生観なのか、不思議物語なのかよく分からないまま
冷たい転びのぬるさの中で物語が進行してゆく。
虚無に近い寂しさを予感することもなく。
不思議そうなのだけど、現実感はきちんとあって。
登場人物はスッキリと美しい。
題と同じ温度感のある文体が好い。
読後に何か残るかというと、この温さ以外は無いかもしれないが、
そういった浸透度の高い作品が好きな方に。
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