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この話の原典ともいえるゲルマン神話伝承では,クリームヒルトよりブリュンヒルドの方が主役です。さらにゲルマン神話伝承では,ブリュンヒルドはジークフリートの恋人で,ジークフリートの火葬の際に,自分も火の中に飛び込んで果てる烈婦です。
そちらを先に知っていた僕は,「ブリュンヒルドはジークフリートが好き」という意識が常に働いてしまい,彼女のセリフの一つ一つを裏読みしていました。つまり,彼女の行動は,屈辱からではなく,愛と嫉妬ゆえの行動だというわけです。
当然,作家は原典の伝承を知っているわけですし,あながち間違った読み方とも思っていません。
この本の後編では全く活躍しませんが,2度目に読むことがあったらは,クリームヒルトではなく,ブリュンヒルドに注目して読み直してください。
夫のために一族皆殺しにするクリームヒルトより,嫉妬のために好きな人を殺してしまったブリュンヒルドの方が,むしろ共感できるかもしれません。
神話や英雄伝説の題材を織り込み,そこにゴート族の伝承やフン族の歴史などを絡めて,全体が無理のないストーリーとなっています。
この素晴らしい傑作を今は名前も知られていない詩人が作ったということに,また驚かされます。
全く本を読まない僕の弟(19)に,この本を薦めてみたところ,あっという間に読み終わってしまい,日頃の鍛錬が足りないため補えぬ読解力を,あれこれ質問でカバーしていました。推薦人冥利に尽きるというものです。
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