『善悪の彼岸』のレビューは、新潮文庫、岩波文庫、光文社文庫のものが、
全部混同してアップされてしまっているようですので、
このバージョンのレビューの形で書きます。
『善悪の彼岸』の訳は、各社からいくつか出ていますが、
岩波文庫版、ちくま文庫版と比較すると、光文社文庫版が
日本語として最も了解可能な訳だと思います。
他の訳は、原文にはより忠実なのかも知れませんが、
日本語として意味不明な訳があまりにも多く、
他のバージョンを参照しなければ十分には理解できないと
思います。
とりあえず、1つのバージョンだけ選ぶなら、現在のところ
光文社文庫版しかないでしょう。
味読し、思索をめぐらして楽しめる本だと思います。
『善悪の彼岸』そのものについて言いますと、
この著作には、立論の前提となる論理的基盤が
あらかじめ書かれていませんので、何について
書いてあるのかをつかむまでが難しい本だと思います。
中心的な問題は、認識論だと思います。
そして叙述されているニーチェの考え方は
(時系列的には、もちろん構造主義の方がニーチェの
影響を受けているわけですけれど)、構造主義や、
仏教の空(くう)の認識論に非常に近いと思います。
ソシュールあたりからの構造主義関係の諸書、
龍樹を中心とした 空の認識論関係の本を
読んでからだと、この本を読むのが
だいぶ楽になるのではないでしょうか。