ドゥルーズ『ニーチェと哲学』の新訳。足立和浩による旧訳から比較して
新訳は、哲学的なドグマとニーチェの凡庸な印象とをともに批判する
本書の独自性をいっそう際立たせている。
改善点は三つある。一、本書は五つの章から成り、それぞれの章は十五
前後の節に分かれる。新訳ではその節のなかの段落ごとにも小見出しをつけ、
トピックをつかみやすくしている。二、ドゥルーズの使用するニーチェのテキストは
一般に入手がむつかしく、参照に不便だが、新訳では、その引用のすべてに、
日本で入手が容易な、ちくま学芸文庫や白水社のニーチェ全集への対応箇所を示している。
三、ニーチェの用語を概念として把握しようとするとき、新訳がいっそう洗練されていると
気づかされる。たとえば第三章六節の小見出し「力能は、意志が意志するものではなく、
意志のうちで意志するものである」など。反動的‐生成のもとでの力能の意志の
誤解が、今日までのニーチェのありとあらゆる凡庸なイメージを活気づけているのだが、
本書は状況に対する批判としても、ニーチェに内在して、ニーチェのように厳密かつ体系的に
なされている。訳者の解説も本質的な点が要約されており(「この意味では、哲学の歴史はまだ100年ほど
であり…」)、強く勧めたい。