真の芸術家は、自己を解放するために創作を続けていると聞いたことがあります。つまり創作しなければ精神のバランスを失ってしまう、創作するために創作するのではなく、激しい衝動に突き動かされて創作を行うと。
スタートしてすぐに、映画監督として大成したトトが愛情的には満たされず、また注意力散漫で交通事故を起こしかけるシーンが出てきます。いったいこの人物の心の中はどうなっているのだろうか、と非常に興味を持ちつつこの長い完全版をみました。
少年トトと映画技師アルフレードはいいコンビです。そしてアルフレードは、芸術家としてのトトの才能を見抜いたのではと私は思いました。しかしトトはある女性と出会います。幸せな日々を過ごします。彼の芸術家に必要な衝動が急速にしぼんでいくのを目の当たりにしたアルフレードはとんでもないことをしでかします。結果としてトトの人生のある時期から大切なシーンがすっぽりと抜け落ちてしまいます。しかしそのために彼が一流の映画監督になれたのではと思ったります。
最後にアルフレードによってトトの人生の途中から「カット」されたシーンが流れるわけですが、トトの心境としては「やられたなー」という感じでしょうか?私にはそんな表情に見えました。
商業主義に毒されてしまっている現在では真の芸術家は生まれにくくなっているのではないでしょうか?豊かさや余裕を感じさせ、瀟洒ないでたちで文化を語る人々に芸術家としての衝動というものはあるのでしょうか?
ハリウッド映画が好きな方には当初公開された短いバージョン、ヨーロッパ映画が好きで芸術論を云々することが好きな方にはこの完全版をお勧めします。かなり皮肉なことですが。
なかなか考えさせられる私の大好きな一本です。