この作品が世に出た1981年と言えばスピルバーグやルーカスの大ヒット作が映画界を大きく変えていた時期にあたります。
「只のB級娯楽映画」に対して莫大な製作費と最新のテクノロジーを投入して「超大作」に仕立て上げる時代となったわけです(これは現在も変わってませんね)。
そんな流れに背を向けたこの作品が今でも輝きを失わずに愛されているのは中々に興味深いですね。
徹頭徹尾「低予算のB級映画」でありますがその「格好の良さ」は無類であります。主演のカート・ラッセルを筆頭にドナルド・プリゼンス、リー・バン・クリーフ、アーネスト・ボーグナインにハリー・ディーン・スタントンそしてアイザック・ヘイズまで揃えた布陣は正に鉄壁。
しかし一番興味深いのは監獄島と化したマンハッタンに不時着した大統領を無理やりに救出に行かされる主人公、スネーク・プリスキンのキャラクター造形でありましょう。
カーペンター監督の全作品に通じるものでありますが徹底して「反権力/反権威」的なのであります。この点こそが本作の魅力であり今日まで輝きを失わない理由でありましょう。
アメリカ映画のヒーローと言えばかつては組織に縛られずに反骨精神を貫き通すのが当たり前だったはず。そんな味のあるヒーローが見当たらなくなって久しいですね。
だからこそスネークのラストの行動の無茶苦茶さは思わずバンザイものであります。たとえ世界中を敵に回そうとも「No!」を突きつけるヒーロー像は実にロックンロール的。
このストーリーなら本来もっとアクション満載の娯楽色の強い作品を作り上げてしまいそうなものなのに微妙なところでアクションもサスペンスも欲求不満が残る。それが逆に作品の魅力になっているところが実にニクイのであります。
それにしても70年代のアメリカンニューシネマの匂いを今に残す(つまりそれは私等の世代にとっては映画らしい映画という事ですが)現代の映画作家と言えばカーペンター氏とクリント・イーストウッド氏くらいではないでしょうか?
B級でもいい、チープでも構わない。「Cool」であるとはこういうことをいうのです。