超新星爆発のニュートリノをカミオカンデで捕らえた小柴昌俊博士による自叙伝。ニュートリノは、昨年から速度が話題となっているが、この本では、小柴昌俊氏の幼少期から、ノーベル章受賞までとその後の経緯を実に面白おかしく語っている。ニュートリノは直訳すると、「中性微子」らしいが、普段は聞いたこともない、このようなニュートリノに関する雑学まで身に付く内容だ。
本書の第1行目は、1987年2月23日で始まる。この年月日は超新星爆発が観測された日を表している。小柴博士に関しては、生まれた日から、幼少期や苦しみもがいて努力した少年時代、屈辱の徴兵検査、一高・東大・東大大学院からロチェスター大学での博士号取得までもが描かれている。当時の東大大学院に入るには試験がなかったことや留学先で支給された生活費が東大教授の月給よりも多かったことなど、今となっては知ることができない貴重な内容が時代的背景と共に述べられている。結果論ではあるが、小柴昌俊氏が生まれてから博士号を取得したり、カミオカンデを建設していた最中にも、16万光年先から放出されたニュートリノは地球を目指して進行していたわけだ。
登場する人物も朝永振一郎氏を中心に南部陽一郎氏などの出会いが取り上げられているため、物理学の重鎮の人となりを知ることができる。観測衛星の名前にまでなったチャンドラセカール教授にも会って教えられたなど、実に多くの有名人が登場する。お見合い・結婚式・伊勢丹で購入した模型飛行機・秘書の採用・東京教育大学学長室で飲んだ焼酎やウイスキーの話などに絡めて人とのつながりを覆い隠さず記述しているため、マスター取得後、企業に就職するか、さらに進学するか悩んでいる大学院生に世渡りの術を示してくれる内容となっている。
ニュートリノに限らず、戦後の社会的な背景から米国の研究文化など、本書から得られる知識は豊富である。国民の血税がカミオカンデ、スーパーカミオカンデへと投入されている。税金の使われ方を知るためにも納税者として本書は読んでおいた方がいいだろう。