著者は元教師で、鳥類を研究するかたわら野生動物にも興味を持ち、独自に研究を続けている人物。仮説として著者は考える。日本にはニホンオオカミと家イヌの他に、ヤマイヌという別種の生物がいるのではないか。そしてニホンオオカミも絶滅していないのではないかという前提のもとに九州地方の山岳地帯を探索して回った。
2000年7月。著者はニホンオオカミらしき野生動物に遭遇する。写真撮影に成功した著者はこれらの写真を研究者に送り、意見を交し合う。イヌ科動物を専門に研究している識者の間でも意見は割れた。ニホンオオカミに間違いないという説、オオカミ犬であるという説、四国犬であるという説。著者はこれらの写真をあらゆる角度から科学的に精査し、ニホンオオカミであると結論づけた。
そもそもオランダのライデン博物館に収蔵されているニホンオオカミの剥製が、タイプ標本になっているわけだが、それとて本当にオオカミだったのかどうかなどわからないのだ。DNA鑑定ではイヌとオオカミは区別がつかないという。外見上限りなくニホンオオカミであっても、特定するためのキーは頭骨を調べるしか方法がない。比較のしようもないほどニホンオオカミの輪郭はあいまいなのである。写真に撮られた個体を殺して頭骨を調べ、ニホンオオカミであると科学的に確定できたとしても、その時点で絶滅・・ということにもなりかねない。科学のジレンマである。
感情に走らず、冷静に科学的解釈を求め、真摯な姿勢で研究をされている著者に頭が下がる思いがする。日本の山深くにオオカミが生息している可能性はゼロではないのだと実感できた。生きていて欲しい気持ちでいっぱいである。