著者の今までの著作から比べると「ヌルイ本」である。しかし、そのヌルサは心地よく、また「知」というシンが一本しっかりと通っているだけに一切の「ブレ」がない。
著者はまた、前作「愛国の作法」で示した「自身の立つ位置」を本書では、手法を変えて語っている。「東大教授の語り」を捨てているのだ。前作でも垣間見られた、「熊本生まれの姜尚中」の語りが中心で、それは「東大教授の姜尚中」を超えて読者に響いてくる筈だ。
どうして著者はそういう手法を取ったのか。それは著者が何よりも「人間」として読者に伝えたいという気持ちを最重要としたからであろう。
「人間」とは「人」の「間」と書く。他者とのコミュニケーションこそが人間そのもの。
本書での著者の言葉である。本書の通低に流れる言葉である。
姜尚中ファンだけでなく、不安を抱えるこの国の幅広い人にお勧めの本である。