ニシノユキヒコは、たくさんの恋をしてセックスをする。でもどの女の人のことも、芯の所では愛することができないと感じている。そのことに気づいてしまう女の人たちは、苦しくなったり、切なくなったり、反対にニシノユキヒコを可哀想だと想ったりする。彼女たちはニシノユキヒコを語る、一人一人彼を違う名前で呼び、彼に対する違う思い入れを持って。人を愛するということは、簡単ともいえるし、とてつもなく難しかったりもする。「人を愛する」なんて、ほんとうのところ誰にもよく分からないから。「おやすみ」と「ぶどう」の章が特にいい。二篇の語り手は正反対のタイプの女性で、語り手の個性の違いがニシノユキヒコのとらえ所のなさをさらに浮き上がらせ、それがまた何となく哀しいのだ。