まだまだ「異端者」呼ばわりされることも珍しくない巨匠だが、高い知性と感性に溢れ、純粋な心に満ちて、真の「ヨーロッパ的なもの」を拠り所に活動を続けてきた二人の芸術家の物語は感動的である。
今「二人」と記した。原書では「アリス、ニコラウス」と連名になっている。それは、わが国でいわれる「内助の功」といったものではなく、まさに二人三脚としての共同作業のたまものである。
今年(2005)、第21回京セラ・稲盛財団・京都賞受賞は、わが国でも真価を認める人々が少なくないことを広く世に知らしめたものだ。この機会に、未読の人には是非精読をお薦めする。
今後改訂される場合への注文を二点。まず、書中に出てくる地名をプロットした地図を付けて欲しいこと。私的事項だが、今年夏、グラーツに滞在した際、書中に記された所縁の地を何個所か訪れた。しかし、それは、原書と突合せ、詳細な地図と照合の上で可能となったことである。
もう一つは、初版以後の推移を記した章を記した改訂版が原書では出版されている。その追補もお願いしたい。