まるで畑から米や財宝をごっそり収穫したような読後感を持った。あたかも黎明期の卵のようにカントやニーチェの萌芽を宿しており、2000年の永きに渡って読み続けられているのが納得できた。本巻の末尾で「幸福とは、卓越性に即した活動である。」とそれまでの考察が要約されている部分を読んだ時、愕然とした。現代において流布している幸福感とは―僕自身もそれと意識せず同調していた―、三食昼ね付きから安全や家族円満といった所までほとんどが幸福を状態としている。それに対してアリストテレスは、幸福は状態(可能態)ではなく活動(現実態)と言う。非常に新鮮だった。ただ読者は、要約のみを読んでも理解は深まらないだろうし、章ごとの目次は訳者が作成したものであるから速読は勧められない。それにしても言うに尽くせない程本書からは泉が溢れている。卓越性を「中」や「節度」に該当させたのは、「よいことを過剰に行うのは更によいことだ」と考える現代の通念を発見する手がかりになった。これらの考え方は、当然ながらそのままというわけにはいかないが、教育論に今でも十分活用可能と思われる。