ともすれば情念的(p.84)、価値合理的判断に陥りがちな日常生活において、政治的生活、観照的生活に係る考察は、よりよく生きるための示唆を与えてくれるように思われる。2300年前の著書でありながら、正義を多様な価値観に相応するものとしてる点は、今日の政治にも通じるものがあるのではないか。
〈要旨〉
第一巻
一章〜三章 序説
四章〜十三章 幸福
「いかなる技術、いかなる研究も、同じくまた、いかなる実践や選択も、ことごとく何らかの善を希求していると考えられる(p.17)」「地上一般の最も低俗な人々の解する善とか幸福とかは快楽に他ならないように思われる。…およそ主要な生活形態には三通りがあるのであって、(享楽的生活)と、政治的な生活と、第三に観照的な生活とがそれである(p.26)」「「善」ということは、…多くの仕方で語られる(すなわち、本質にあっては知性が、質にあっては卓越性(徳)が、量にあっては適度が、関係にあっては有用が、時間にあっては好機が、というふうにこれらいずれも善だとされる)(p.30)」「「幸福」とは、究極的な卓越性に即しての魂の或る活動なのであって…われわれが人間の卓越性として解するものは、身体の卓越性ではなくして魂の卓越性なのであり、明らかに政治家は何らかの程度にあって魂に関することがらを知っていることを要する(p.62-63)」
第二巻
第一章〜第九章 倫理的な卓越性についての概説
「徳は情念と行為に関わるが、これらいずれにおいても、過超ならびに不足は過つに反して「中」は賞賛され、ただしきを失わないものなのである(p.90)」「倫理的な卓越性すなわち徳とは中庸である(p101)」以下、過超/不足/中庸の例(p93-98):無謀/怯懦/勇敢,放蕩/無感覚/節制,放蕩/けち/寛厚, 倨傲/卑屈/矜持, 道化/野暮/機知, 嫉視/悪意/義憤
第三巻 倫理的な卓越性についての各論
第四巻 (倫理的な徳についての各論)
第五巻 正義
「正義とはどのような性質の中庸であるか(p219)」「不正とは違法的ということ(狭義における正義)と不均等的ということ(広義における正義)の両義を含む(p222,p228)」「狭義における正義が問われている。この意味における正義は配分的正義と矯正的正義に分かれたる(第二章標題)」「正」とは「中」であり、「均等」なのであって、…配分における正しいわけまえは価値に相応のものでなくてはならない(p232)…価値なるものは万人において同じではなく、…民主制論者においては自由人たることを、寡頭制論者にあっては富を、…貴族制論者にあっては卓越性を意味する(p233)」
第六巻 知性的な卓越性(徳)