近年これほど痛切に女性が自立した職業人であろうとすると、その対社会男的ジェンダーと恋愛に向かう女的ジェンダーに引き裂かれ地獄の苦しみを味わうということを描いた小説はあっただろうか?
すぐれた写真家は男であれば容姿が優れていても単なる付加価値としかとられないのに、美人の女性の場合は「美人写真家」とわれ容姿の方に注目が行く。それを極端にいやがり、眉の手入れさえしないニキ、しかし、フリーランスであれば人付き合いも避けられない,そんな苦しみをアシスタントの男性との恋愛が救ってくれたのように見えるが、結局破局を迎え…というストーリーが切ない。
しかし、加賀美がもう少しジェンダー意識が低く、男なのに恋人のアシスタント、という位置づけに葛藤するという設定にした方がより悲劇性が際立ったのではないか?もっとも、ジェンダー・フリーな男を恋人にしても結局うまくいかない方がもっと救いようのない悲劇ではあるのだからそこまで考えればこの方がよかったのかも。