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改行が多く、詩的な文章である。全篇を通して、詩学的な思索性に満ちている。
いくつかのタイプのヒコーキが登場し、そのメカニズムを背景にした空中戦が精緻な書法で表現されていて、アニメ的でもある。
登場人物の名前も暗示的だ。クサナギ、ゴーダ・・・これらはDVDアニメシリーズ「攻殻機動隊 stand alone complex」シリーズの重要登場人物にダブる。両者の作品には共通のモチーフがある。自己へのあくなき問いかけと、現実との関わりへの倦みの交錯である。
それがよりはっきりするのは、“劇場版攻殻機動隊” である「イノセンス」の次のセリフだ。
「人はおおむね自分が思うほどに幸福でも不幸でもない。大事なのは、望んだり生きたりすることに飽きないことだ。。。」
元ネタはロマン・ロランであるが、このテーゼはこのキルドレ・シリースにもビタリとはまる世界観と言える。
大事なのは「望みが叶うかどうか」ではない。
「望むこと」自体に飽きないことなのだ。でも飽きたときは・・・その問いに潜む漠たる不安と恐怖はこの小説でも深淵なる口を開けていると感じられた。
読了してまず思ったのは、『スカイ・クロラ』や『ナ・バ・テア』をもし戦中派(こういう言葉も死語になりつつあるな(●^o^●))の飛行機乗りたちが読んだらどう感じるだろう、ということだった。森博嗣の放つ文章は実に詩的で、実に立体的だ。激しく揺れるその展開の速さにまるで自分が草薙水素の隣にいるような気がしてくる。『死』と隣り合いながら生きた『遅れなかった青年たち』の見た風景とそれは似ているのだろうか。
森作品は、まずキャラクターありきだ。何体かの魅力的な要素を持ったキャラクターを適度に配置、そして当然予想される化学変化を映像化し、それを文章化するという感じがする。その辺がふつうの作家とだいぶ違う。言ってみればそれは、2次元で小説を書くのと3次元で小説を書くのとの違いだ。森博嗣のキャラクターは皆、立ち上がり動き回る。その中でも草薙水素は『純』に光っていてステキだ。(●^o^●)
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