「ナンシーが今いたら…」。町山広美とリリー・フランキーの対談のタイトルにもなっているように、この言葉を本書に登場する多くの人々が口にし、あるいは胸に抱いている。去ってしまった友人を寂しく思う気持ち、最も信頼すべき批評家である彼女の仕事を見たいと願う「読者」としての純粋な好奇心、そして同業者としての尊敬の念。そういったものすべてが込められた、象徴的な言葉であると思う。
「あの日、ライブの帰りに見失ったナンシーさんを僕はもう少し探せばよかった」という天久聖一。「認めるわけにはいかないし、認める必要もない」とコラムを結んだ、いとうせいこう。「ありがとう、ナンシー」と手書きの文字で書いた安西肇。愛する人の死を前に、それぞれの分野で活躍するそうそうたる面々が、大切に、誠実に、文章を書いている様が伝わってくる。(門倉紫麻)
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