いわゆる「ナラティヴ・セラピー」以外にも、ナラティヴという発想や現象は様々な分野・場面ですでに見られるものであったり、その考え方を活用することができる。この本を一冊通して読んでみるとそのあたりのことが実感できるのではないだろうか。筆者の多くが国内外の実践や研究も広く紹介している。
また、よくある「物語」と「物語る」ことの誤解や混乱なども筆者なりの立場で整理されているところがわかりやすい。クライアントの語りに耳を傾けるのは当然だからナラティヴセラピーなどとわざわざ言う必要がない、というような指摘が時折聞かれるが、そうした指摘は語りの「内容」に偏重しているということがこの本を読めば理解できる。個人的には初心者向けの入門者ではなく、ある程度ナラティヴの文献に触れてスッキリしないところが出てきたあたりで読んでみる、というのがいいのではないだろうか。