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最近マスコミが盛んに取り上げる二十歳前後の作家の中ではきちんとした文章が書ける人だなという印象がまずあります。途切れ途切れの感覚的なケータイ日本語を使っていない点は好感が持てました。
しかし、この主人公が恋する葉山先生と小野君はどちらも私の目にはひどく幼い人物に映りました。大学生の小野君は仕方ないかなとは思います。相手の女性の気持ちなどよりまず自分の欲望、という態度の性行為など、二十歳そこそこの学生はそんなものです。そこに若干の既視感を覚えないでもありません。
ですが、葉山先生は三十二という年齢には似つかわしくないほど地に足がついていません。妻との痛ましい過去があるということを差し引いても、理解する気にはなりませんでした。
ことほどさように、この切なくほろ苦くあるはずの若い恋の物語は、私に擬似恋愛感を与えてくれませんでした。主人公とともに惑い悩みながら歩むこともなく、あまり魅力的ではない男性二人の間で揺れる泉を、私はただひたすら冷静に傍観し続けていました。
読了後、この小説で最も魅力的な言葉は実は冒頭の頁にあったのだということに気づきました。
「きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。だったら、君といるのが自分でもいいと思ったんだ」(4頁)
この言葉を口にするのは泉の婚約者です。泉は結果的に素晴らしい人と出遭ったのだということです。それならばこの物語には救いがあると思いました。
*「エル・スール」の監督名はエリセです。エルセ(24頁)ではありません。
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