フランス革命からナポレオン戦争期というのは、もっとも魅力的な時代の一つである。激情と理性とがたぎる時代に、強烈なキャラクターが次から次へと現れ、欲望や理想とが入り乱れ、有為転変が展開していく。結果として近代社会の柱である理念や社会制度が成立するわけだが、それらはまるで人生の縮図のようである。
それを一定の視野からおさめ、一冊の本にまとめるとなると、それなりの工夫や労力が求められる。本書はナポレオンの「熱狂情念」、フーシェの「陰謀情念」、タレーランの「移り気情念」とみなし、この三つ巴と観点から、1789から1815年の大動乱を生き生きと活写する。
古今東西、身近な例をも引き出して、ウィットに富む筆致で、血の通った、しかしまた一歩引いた、構図の見える歴史絵巻が展開される。やや分厚い本であるが、どんどんページを読み進めて歴史のダイナミックさ、面白さを体感できる。
なぜナポレオンは成功し挫折したのか、タレーランはいかにして外交的に成功したかなど、主要なテーマにも一定の答えが示される。