まず最初に、このDVDの唯一の欠点ではないかと思われる、字幕について少し。
この映画に出会ったのは小学生の頃。深夜にTV放映されていたのを偶然観ました。鑑賞後に「とても素敵な字幕だったなぁ」と感じたことは、それから二十年程経った今でも、よく覚えています。
しかし、その素敵な字幕を知っているので、このDVDの字幕には、どうしても納得出来ませんでした。そこで一つだけ、二つの訳の違いを紹介させていただきます。
映画の中盤、主人公と恋人は十数年ぶりに再会します。しかし、その余りに長い断絶の時間の壁に、お互いの感情は阻まれてしまい、ほんの少し会話しただけで、恋人はタクシーに乗ってその場を立ち去ろうとします。
(野球の試合に)「明日も来てほしい」と追いかけながら語りかける主人公に、「行けないの。今日来てしまったから」と答える恋人。「仕事かい?」と主人公が訊くと、恋人は「ええ」と。それを聴いた主人公は、少し辛そうにタクシーのドアを閉めます。しかし、今にもタクシーが走り出そうとする次の瞬間、主人公は恋人に向かって意を決したように「Come」と真剣な眼差しで言葉を発します。その直後、恋人を乗せたタクシーは発車して・・・(という場面です)。
そのような繊細な場面の「Come」という短い一言に、どうのような訳を配したか。
このDVDの字幕では、「来いよ」という命令形。
一方、深夜のTV放映の字幕では、「まってる」と訳されていました。
この「まってる」という意訳が、主人公の心の感情を、如何に的確に表現して見事か。字幕なさった方の感性の豊かさに、脱帽します。
正直言ってDVDの字幕は、この作品に流れる詩情を表現するどころか、むしろ台無しにしてしまっていると感じました。そのことが、とても残念でなりません。
DVDのジャケットだけ見ると、一見、単なる野球のヒーロー物に見えてしまうかもしれないこの映画。しかし中心に流れているのは、「人生」という、どこまでも深い悲しみに満ちた、そしてまたどこまでも光りゆらめく、豊かな河です。
ストーリー、キャスティング、画面の色彩、音楽、衣装など、どれをとっても文句のつけようがなく、何よりも、俳優達の笑顔が、とびきりキュート。
おすすめです。