ただでさえ歴史の重みと敷居の高さを感じるモノクロ写真だが、サブタイトルで示されたデジタル化されたカラー写真をモノクロにして楽しむという意図はユニークでほほえましい。パソコンでのレタッチを一通りできる人にとっては新しい趣味の開拓に繋がると思う。
一方で現像室で格闘しているマニアには、ほとんど歯にも引っ掛からないような内容にも見える。執筆陣は比較的オープンな雰囲気のナショジオのカメラマンの中でも撮影にコダワリをもつ人が多く、デジタルカメラそのものには懐疑的、ライカをはじめとするクラシックカメラや、中版カメラや大判カメラを自由自在に使って、さらにフィルムのスキャニングを含めたデジタル画像を広く扱うという内容だ。全体的にはこの小冊子に一通りの内容があり便利と感じた。
著者のぼくとつと語る調子は慣れるまで時間が掛かるが、モノクロ写真の時間軸を越えた静かな魅力を伝えようとする誠実な雰囲気を感じる。日本に多いストリート・スナッパーとは違い、かなり計算ずくの構図を重視している点でもそうした違いは明瞭に現れている。