有斐閣アルマシリーズは教科書として優れたものが多いが、本書でそれを期待すると肩すかしを食らう。
別のところで有名になってしまった大澤氏の序章は、アンダーソン「創造の共同体」とネグリ&ハート「帝国」の粘着に頁を割き過ぎで、先行研究の幅広いレビューを期待する読者の多くは置いてけぼりをくらうであろう。
地域別のナショナリズムの様態は担当者の書きっぷりにムラがある。出来不出来ではなく、教科書として使いにくい章が散見される。そして実は教科書的にまとまっている章は、担当者がこれまでそのテーマで何度も書いてきた論文の再構成だったりするのだ。専門性を求めるなら、彼らの論文に直接当たる方が良い。姜 尚中氏の終章は私小説かエッセイといった感じで、講演会で聞くのはおもしろいが、有斐閣アルマシリーズに収めるべき性質ではないと思う。