恐らく20世紀最高の歴史学者のひとりエリック・ホブズボームのナショナリズム論。
とにかく翻訳がいい。ホブズボームについてはとりわけ「20世紀の歴史」の翻訳がひどいことは殊に有名だが、本書は安心して読める。本書を読めば、内容以前にホブズボームの博学さ、(訳がいいおかげで)類を見ない表現力の豊かさに舌をまく。本書については「20世紀の歴史」と同様、西欧中心主義という批判は当然あるだろう。しかし、ここまで包括的にナショナリズムを描ききったのはほかにみあたらず、アンダーソンの「想像の共同体」も、あくまでナショナリズムの一側面を論じたに過ぎないことを教えてくれる。昨今日本でもナショナリズム論がはやっているが、「国民の歴史」的然り、「国民国家たそがれ論」然り、ナショナリズムと国家の区別すら踏まえられていない議論があまりにも多い。何故、日本でそういう議論がやたらはやるのかを答えてくれるのが本書である。ただ、ナショナリズムの今後のゆくえについて本書はその政治的機能喪失ゆえに「ナショナリズム衰退説」をとっている。それは一面では正しいとおもうが、他方で台頭するラテンアメリカ等での反グローバリズム運動のなかでのナショナリズムをどう評価するのかなどについては、依然見当の余地があると思う。