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中身はナショナリズムは幻想に過ぎないということを論じている。それによってナショナリズムの絶対性を相対化し、想像の世界で憎しみや怒り・差別をつくり上げても妄想でしかないということを気づかせてくれる(もうみんな知っているか)。
ところが、結論部で「マジョリティに対抗するためのナショナリズムは許される」ということになっている。
しかし、それはマジョリティのナショナリズムの強化につながって逆効果である。
ナショナリズムは「想像の共同体」といわれているように根拠のないイメージである。そのイメージを作り上げるために、人種・国境・言語・歴史・文化などの、それ自体境界があいまいな要素が集まりお互いに自分のアイデンティティの根拠を提供している。また、根拠のない空疎なイメージであるナショナリズムは他のナショナリズムによっても自分のアイデンティティを確立する。他我があるからこそ自我がある。
よって、ナショナリズムに対してナショナリズムで抵抗することは、お互いに相手の存在を際立てることにつながってしまう。これでは克服どころではない。
姜さんにとっての解体すべきナショナリズムはナショナリズム一般ではなく、日本のナショナリズムに過ぎない。そして、その反動として在日としてのナショナリズムをつよく保持している。そもそも克服する気はなさそうである。
むしろ、自分のナショナリズムを肯定したいがために、自分のアイデンティティを得たいがために日本のナショナリズムに言及しているように感じる。自称無国籍人である森巣さんとの対談という設定も余計そのことを際立てている。
彼らの結論はナショナリズムの強化にしかならない。本書の題名である『ナショナリズムの克服』に文字通りの内容を期待するとがっかりすることになるでしょう。
ただし、未だにナショナリズムの幻想のなかに生きているひとにとっては、本書はやさしく、そしてさわやかにその幻想から眼を覚ませてくれるだろう。
途中、森巣氏が自分の息子を自慢して、「アメリカで株のディーラーとして大活躍しながら、一方でG8のグローバリズムに反対してシアトルでデモに参加し・・・」と述べているが、ここに端的に、「反ナショナリズム」の行動パターンが提示されている。そう、「反ナショナリズム」は、一見マイノリティの味方に見えながら、株取引のようなマネーゲームや、国家間の経済格差を利用して利ざやを稼ぐ多国籍企業と、非常に相性がいいのである。株を右から左へと売り抜けながら、デモへの参加でその罪悪感を帳消しにする、これが、グローバリズム時代の「イケてる」生き方なのだろう。
結局、これまでは「国籍」によって差別されていたのが、これからは「能力」によって差別されるようになる、と。差別が生まれることには変わりない。そして、第三世界が差別され続ける構図も、永遠に再生産され続けるのであろう。
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