両親を事故で亡くした少年ハニバルが、祖父に引き取られる。そして、アイダホ州ボイジでの祖父との生活、祖父にしてもらったお話、そして友達や隣人とのやりとりなどが各章で淡々と描かれる。
暖かみのある穏やかな文章と、やさしくて賢く毅然とした祖父の人物像に惹き込まれて、読み進んでいるうちに、思わず手に汗握る緊張感を感じる作品である。
大きな山場は2つ。最初は銃を使いたくてしょうがない少年が、ヒナのいるナゲキバトを撃ってしまい、悲しい決断をするよう祖父に命じられるところ。そして、少年の何気ないひとことで少年がある事件に巻き込まれてしまう顛末である。
さらに、前半で祖父の話してくれる物語が伏線となり、最後に、やさしくて穏やかで強い祖父の「十字架」とも言える過去が明らかになる。
ほのぼのとした朴訥さを全体に感じさせながら、一瞬も飽きさせず、衝撃的とも言える結末で見事にそして静かに着地する構成は見事だ。
扱うテーマは決して軽くはないが、読み終わると、ぶつかりながら失敗しながらでも、人間はそこから何かを学べば生きていけるのかも知れない、と希望と勇気がわいてくる名作だと思う。