レイチェル・ワイズ演じるテッサは、身重の体でアフリカの貧しき人々の間に分け入り、自分の情熱を全開させる。女性の柔らかみと強さを内包した、現代のジャンヌ・ダルクという感じの闘うヒロイン。全身で演じて、オスカー助演賞受賞は納得です。特に、自分の子が死産だったのにも悲観に暮れずに、他人の子へ愛情を注ぐシーンには感動。
いつも一途なレイフ・ファインズも哀しげな表情がよかった。真相を探るにつれて、その事の大きさに自分だけでは手に負えない現実がのしかかってくる。それでも最後まで妻の足跡を辿り、非力ながら自分にできるだけのことをしようとする。
アフリカの雄大な自然と悲惨な現実を、ときに歪み、ときにブレるザラリとした質感の映像で不安な現状を切り取る。バックに流れる音楽もアフリカのリズムだったり、静かなメロディだったり、巧みに映像の情感を盛り上げる。
前半のゆっくりとしたテンポから一転、後半のたたみ掛けるような展開も見事でした。
ドキュメンタリーのようでもあり、精神的な高みを目指す気高い映像詩のようでもある。サスペンス映画であり、社会派映画の側面もある。そしてもちろんラブ・ストーリーでもあります。陰謀を暴くために闘った男と女との愛の絆を切々を感じさせるものになっています。「僕の家は君だ」という主人公の想いも胸に響く...。
ところで、本作の原題は、「The Constant Gardener」です。constantには、「一定の、絶え間ない」という意味のほかに「不変の」「誠実な」「不屈の」といった意味があり、意味深なタイトルなんですが、邦題もテッサの『蜂の一刺し』と、本作で登場する製薬会社のスリー・ビーズを連想させる、いい邦題だと思います。