77年のオリジナル音源が30年ぶりに再発、81年版との2in1で発売された。81年版の方が本人の理想に近いと言われてきたこともあり、77年版は今一つという先入観を持ってしまっていたが、今は「これを聴けて本当に良かった」という感想だ。
もちろん、オリジナルも81年版も根本的な演奏や歌はほぼ同じで、曲の印象があまり違わないものもあるが、それでも知らない音がふと聴こえたり、逆にあるはずの音がなかったりという小さな発見は随所にあり、当分慣れるまではその辺も楽しめそうだ(81年版になじんだ者にとっては)。
そんな中、音像の違いが特に際立っているのは「五月雨」と「青空のように」であろう。「五月雨」はあの特徴的なドラムが一切なく、また全体に雨音、水音が被っているため、ひたすら長雨を感じさせる、独特な音世界となっている。FM(山下達郎氏との新春放談)で初めて聴いた時は物足りなく感じたが、今ではこちらの方がより気に入っている。番組では、オリジナルの方が松尾芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」の世界観に合っているという本人の話もあったが、そう言われれば、雨続きで勢いを増した川の情景が、聴くたび湧き上がるようだ。
「青空のように」は、従来耳になじんだエコーの深い音でなく、個々の音がはっきりした(見方によっては溶け合わない)ミックスだ。「当時この曲だけ突出させないよう、あえて素材として置いた」という話を雑誌で見たが、確かに完成前の部品のようでもあり、楽曲が気の毒にも思える。やはりこの曲は、これでもかというエコーと音圧で聴いてこそ味があるのでは。
これら以外にも音の違いは多いので、その点も楽しめるが、本作をよく知らない方には、楽曲自体の面白さにもぜひ注目して頂きたい。特にノベルティー路線モノは、歌詞の遊びも盛り沢山だ。また曲ごとに使い分けられた歌唱法や物真似も、存分に楽しんでほしい。