後代に残す自身の子孫の数を極大化するために、生物(遺伝子)の、多様性が生まれたとするドーキンスに比べ、化石を研究してきたグールドは環境への適応を重視しない。
グールドは、「動物の系統はもっとも根本的な部分においては、非常に長い期間にわたって変化しない」と主張しており、大量絶滅の際に多くの種が姿を消しても、そのとき生き残ったものは、適応度よりも偶然に助けられたということになる。
スピード感あふれる訳文と動物学者の新妻昭夫氏の解説、さらに索引と各章ごとに詳細な解題が付いて、丁寧な編集姿勢も印象的な文庫本だ。
(日経バイオビジネス 2005/01/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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多数派であるドーキンス陣営にも弱点はある。それは、遺伝子が生物個体の形態、生理、行動などを一義的・因果的に決定するわけではなく、遺伝子と個体の表現型との間には「一定の規則的な対応関係」が想定されるが、遺伝子がどのように個体という「乗り物を操作する」のか、その正確な関係は分らないからである(p161)。一方、カンブリア紀の動物の大発生や、大量絶滅が小進化に優越して進化の方向を規定したとするグールド説も、雄大だが実証されていない面がある。
両者の説には共通の土俵も多く、一方が真というよりは、むしろ相補的だと著者は考える。三十億年前にはバクテリアという生物が地球を支配したが、今も事態は変わらないとグールドは言う。現在の地球の生命の主人公は人間ではなくバクテリアであり、バクテリアは海中や土壌にあまねく遍在して、他のすべての生態系の根幹をなす。「進化」というとつい最先端の新しいものに目が行くが、これは重要な指摘だ。
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