「静かに恐慌化する世界」は本書の副題である。昨今のサブプライム問題を調べていると確かに「ドル覇権の崩壊」は進行しているように思える。
筆者は、理論経済学者について「偉そうな数式や理論を並べるだけ」、さらに経済新聞記者についても「景気循環論を並べるだけ」と一刀両断。本書では「私は預言者となる」と断言している。
現在の世界経済を見回すと確かにドルの権威は揺らぎ、恐慌化するという見方は当を得ている。ただし、ドルが覇権を固めてきたのはそれなりの年月がかかっているわけで、グローバル化の進んだ現実ではすぐに恐慌化することは無いと見るのが妥当だろう。「静かにゆっくりとした大調整」が起きているのであって、ITなどの好業績があるから、米英経済は正確に言えば「恐慌」ではなく「不況」を迎えるのだろう。
副島氏の予測は、福田政権の成立、サブプライムローン(現実には似たようなローンだったが)問題の浮上をいち早く言い出した点では評価できる。反面、金(きん)の評価は過大だろう。
一番良くないのは、世界経済はロックフェラーなど一部組織、または個人によって動かされているという「幻想」である。小さな会社の社長ですら自分の意思通りには100%ことが運ばないのだから、この世の中は極論かもしれないが「不条理」(カフカの言葉)によって動いていると考えるのが現実味がある。「個人」によらず「組織(国家や法人)」の意思決定で世の中は動くから、矛盾が大きいのだろう。
それにしても副島理論は切れの良い刃物のようだ。疲れているときに本書を読めばより疲れるし、元気なときに読むとハイになれる。副島氏の予測は「丁半賭博」のようだ。