犯人たちが典型的な「極悪人」であった前作に対し、本書では同情に値する脱走犯が描かれている。前半部分「目撃者」には、犯罪現場を目にしたために悪の道を歩むはめになったワッツが、後半「星の切れっ端し」では、幼児期の虐待によって暴力が身に染み込んでしまったモズミが、それぞれの境遇によく似た地球人に取り付いている。マエストロが「百パーセントの悪人はおらん」と言うとおり、犯罪者の心の中にも善がある。逆に、普通の人間であっても悪を芽吹かせる心の隙がある。本書は奇想天外な冒険ファンタジーの世界でありながら、単純な勧善懲悪ストーリーにはない、人間の弱さや生きることの悲哀を感じさせる深みのある物語である。
ほかに、シェンとマエストロの運命的な出会いのシーン、生れて初めて仕事に恐れを抱いたシェンの心に潜む陰、ドリームバスターに対抗する闇の組織など、1作目を知る者にはたまらない魅力が連なっている。(冷水修子)
今度のミッションは、シェンにとってどうも、苦手だった。村野理恵子という極度に他人を恐れる20歳のOLの夢のなかだ。彼女は殺人事件の目撃証言をしたことがあり、それ以来、誰かが心の中で話し掛けてくるという。自分が目撃したのは、本当に犯人なのか?落ち込む彼女に苛立ちつつ、シェンは彼女の悪夢に同調してしまう。というのは、無意識にシェンの母親ローズを、思い出しているようだ。実はローズは、D・Bのターゲットでもある凶悪犯の一人だった……。
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ただし、いかにも、な布石が多いのには閉口する。次作が出るまで宙ぶらりんの気持ちのまま待たされるではないか。待つのも楽しみと思える人はいいが、私はできるだけ布石はさりげなくちりばめてあって、読み終わった時にその存在に気づくくらいのものが好みなのだ。
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