中央線沿線で一人暮らしを経験した私にとって、物語の情景が鮮やかに浮かんでくるような小説でした。他のレビューアーの方が「けっこう悲惨な」と書いていらっしゃいますが、多くの都会の女性の一人暮らしはほぼあんなものですよ。きっと女の孤独は男の孤独よりシリアスに受け取られてしまうのでしょうね。そして「孤独」というのは未婚、既婚に関わらないものです。帰る家に誰かが待っていても、絶対にわかりあえない「孤独」というものも存在します。
角田光代の小説は他者に鋭いとげを放つような主人公の一人称が多いためかなじみをもてないできたのですが、今回の作品群は30代、40代の女性たちが主人公であるためかむしろ他者をふんわりと受け入れるような柔らかさを感じました。20代ですんなりと他者を受け入れられてしまう女もいれば、30代になってやっとその準備ができるようになる女もいる。そして中央線沿線の街々はそういう女が暮らす街にふさわしい。
「孤独」とは家族、恋人の有無をさすのではなく、他者を受け入れられない人間の背負う業だと理解している大人にこそ、読んでほしい本です。