ゲーム発売当時、2枚のCDで売られ、その後廃盤となりプレミアが付いていた同サントラを、一枚にまとめて再販したCD。
暗く重く、頽廃的で救いのないドラッグオンドラグーンの物語を支えた音楽もまた、
聴く人の不安感を執拗に煽る珠玉の音楽がそろっている。
これらはオーケストラ音楽の生演奏に対し、クラブミュージック的な解釈を基に
コラージュを重ねて作り上げられたものであるが、もはやクラシック音楽からも
クラブミュージックからも離れた、極めて前衛的・個性的な「ゲーム・ミュージック」として成り立っている。
作曲はリッジレーサーシリーズなどを通してナムコサウンドの屋台骨を支えた佐野信義氏と相原隆行氏。
相原氏の曲は、原曲の細分化を通じて、ミクロに取り出されたメロディや奏でられた楽器が放つ狂気感を
露わにしているように感じられるのに対し、佐野氏は逆再生やループ、エフェクトなどをふんだんに交えた、
もはや破壊に近いレベルでの再構築を行い、音楽とノイズの境目をひねり出しているような凄みを感じさせる。
両者共に前述したとおりの極めて野心的な音楽である。
このCDの中で私が好みなのは、相原氏の作曲では、凱旋曲のような力強さと
ワルツのような豊かさを併せ持つ「第一章 上空」や、
謝肉祭を元にした重厚なフレージングが印象的な「セエレの祈 上空」、
佐野氏の作曲では、狂ったようにかき鳴らされるストリングに幾度となく
挿入されるノイズが不可解さを印象づける「第十二章 地上」や、
ゲーム内容を反映してか極めて陰鬱な歌詞に、抑揚無く淡々とした歌声と、左右に極端にパンニングされ、
執拗に耳を責め立てるストリングスがまとわりつく主題歌の「尽きる」である。
最初に聴くオープニングから、複数別れるエンディング曲に至るまでの全てがこのような曲調であり、
それゆえに強烈に賛否の分かれる音楽なのは確かだが、
曲はどれも濃密でその質は極めて高く、賛否はあれど他では味わえない圧倒的な存在感は
聴いた多くの人にとって印象に残ると思われる。
ゲームで既にこれらの曲を存分に味わった一方、旧CDの廃盤とプレミア価格に泣いた人にとっては勿論、
未プレイであっても、多彩なジャンルが用いられたゲームミュージックの中でも異端な音楽を味わいたい人にも
手にとって欲しい一枚。
また、作曲の両氏がクラブミュージック寄りのアプローチをしていることや、
クラシック音楽の元ネタがある(サントラ内にも一覧がある)ため、
テクノ系やノイズ系、あるいはミュージックコンクレート系などが好きな人や、
あるいは音楽の分解と再構築を冒涜だと思わない寛大なクラシック音楽好きの人も手に取ってみると面白いのではないかと思う。