ドラッグを通して「社会」を分析する視点が非常に面白かった。
著者の前著『覚醒剤の社会史――ドラッグ・ディスコース・統治技術』は、
日本社会病理学会学術奨励賞と日本犯罪社会学会奨励賞を受賞している。
本書あとがきには、「『覚醒剤の社会史』に文脈を与えるものとして執筆
された」と書かれている。前著と違い、細部にわたる分析を省き概略として
おおよその話が理解できるように構成されているようだ。
私は前著を読んだことはないのだが、参与観察やインタビュー、資料をまと
めひとつの大きな話に結び付けていく展開方法を参考にさせてもらおうと思い、
また単純にドラッグを通して「社会」を眺めるという試みに興味を惹かれ
購入した。
世界思想社は本の価格が安いめに設定されているので助かる。
まず最初に、ドラッグを手に音楽イベントへ向かう参与観察の様子が
描かれる(1章)。そして、ドラッグをめぐる社会学の議論をまとめた
のちにインタビューデータを引用しながら、ドラッグ使用者の論理を
描いていく(3章)。
ここまでが第1部の内容となっている。第2部では、日本、アメリカ、
イギリス、オランダのドラッグ政策の内容や議会録を分析しながら、
「秩序」構想という問題へ話を展開していく。
最後には、「社会的」なるものを身振りとして実践するドラッグ使用者と
「社会的」なるものを管理の資源として利用する国家が対比され、「社会的」
なるもののなかで両者が調停されていくことを指摘する。
生々しい質的データを用いたドラッグ使用者視点にたった分析がマクロな
社会状況と結び付けられながら述べられる。さらに「反復」という発想を
通して、マクロな社会状況(政策)は個別のドラッグ使用者へと結び付け
られる。このへんの論理展開が興味深く、面白かった。