私、ブルース・リーの熱烈なファンというワケではありません。この作品を知るキッカケも
総合格闘家の金原弘光選手が本作のサントラから「DRAGON THEME」を試合の入場曲に使用していたから。
サントラを購入してからBSの映画番組で本編を観て、それからDVDソフトに辿り着きました。
スターの評伝モノ/一代記モノは映像化が難しいジャンルかと思われますが、本作は大健闘していると思います!
ブルースの未亡人であるリンダ・リー・キャドウェルの著作を原作にしているだけあって、
近親者しか知り得ないエピソードが物語に深みを与えています。
加えて「アメリカ社会の中国人差別、ハリウッドの東洋人差別」をしっかりと描写している所が功績として大きい。
作中で特に印象的なのが、ハリウッドに裏切られ傷心のまま渡った香港にて撮影した
『ドラゴン危機一発』のプレミア上映会のシーン。上映後に作品の出来を讃える観客達が作る “人間神輿” に
乗せられ劇場前を練り歩くブルースの誇らし気な姿には神々しささえ覚えます(ブルースに対するリンダの献身がここで報われます。同時に新たな運命の波に呑み込まれる予兆でも有るのですが)。
他のレビュアーの方々も触れていますが、ブルース役のジェイソン・スコット・リーはブルース本人には
似ていません。トータス松本と長嶋一茂を5:5でミックスしたような御面相です(笑)。ロブ・コーエン監督自身も
特典映像のインタビューにて「ブルースに似ていないな、が彼に対する第一印象だった」と語っています。
しかし…やはりハードな格闘/擬斗を迫力満点にこなすジェイソンの肉体と身体能力無しに
この映像は成立しなかったでしょうし、彼を上回る東洋系の俳優も思い付かない。コーエン監督もこの点を評価して
起用したのではないでしょうか。ジェイソン演じる “ブルース” はもっと高評価されて然るべき!
本作は1993年公開ですが、ブルースの遺児であるブランドン・リー(父親の衣鉢を継いでショウ・ビズの世界に
進んだ)が同年に亡くなっており、エンド・ロールにもその旨がクレジットされています。
しかも父親と似たような不可解な最期を遂げています。皮肉と言うべきか数奇な巡り合わせと言うべきか…。
差別や挫折により打ちひしがれたブルースの魂を時にクールな言葉で、時に献身的な愛で救ったリンダ。
結婚を巡り軋轢が生じたリンダと母親の仲を、軽やかに氷解させたブランドンの存在。
ブルース・リーというスターは家族愛抜きには成功し得なかった事を教えてくれる熱き一作です。