ソーシャル・ネットワークの冒頭のようなスタイリッシュで寒々しい凝った映像の予告編を見ていて最初に思ったのは、「これ、見に行こうか。でもな・・・」といった躊躇だった。「日経の夕刊の映画欄でも一番の扱いで褒めている・・・」と、評論家の感性が自分とだいぶ違う新聞の記事ではあまりモチベーション上がらないし。巨額の予算とビッグネームの主演陣というハリウッドでの再映画化(フィンチャー監督はこの表現を嫌っているらしいが)ってむしろマイナス・イメージにつながる場合が多いし。と迷っていたのだが、それらの杞憂はいざ、映画館の座席に座って本編映像が流れ出した途端に徐々に薄れ始め、その後はずっと画面に釘付けになった瞬間に消えてしまった。
原作の内容も充分頭に入っているし、本国版も見ているので、あとはどういう描き方をするのか興味津々で観るといった、どちらかというとやや斜に構えた見方になってしまうが、そういった態度はいつしか忘れてしまって、いつのまにか映画に没頭している自分に気がつく。長いと思っていた上映時間の割に、カット割りやテンポが圧倒的に速くキビキビしていて無駄なシーンが殆どない。スエーデン版ではやむを得ずはしょった部分もちゃんと描いており、これは全く違う映画だと思った。ただ、最初の方の押し花が届いてそれを開封するシーンあたりはややぎこちなさが目立ち、この辺の扱いは本国版の方が上手いと感じた。
この他にも、オリジナルの方がより自然だと感じる部分は幾つか気がつく。例えば、キャラクター。一番は主演女優。彼女がだめだとは言えないが、どうしてもノオミ・ラパスの自然体ながら画面から漂うその存在自体が強烈な個性には負けてしまう。でも、別の見方をすれば、つまり外側の世界に一切自身を晒さず内に籠もった自己完結型な小柄で少年のようなリスベットというキャラクターの表現という観点から見ればルーニー・マーラも悪くない。むしろこっちの方がより原作に近いかも。ブルムクビスト役のダニエル・クレイグは良くも悪くもボンド以前によくやっていた役そのままって感じで、ビッグネームだしこれはこれで良い。ヘンリック・ヴァンゲル役のクリストファー・プラマー、マルティン・ヴァンゲル役のステラン・スカルスガルドは共に本国版に勝るとも劣らぬ感じ。気になったのは、ビュルマン弁護士役とアルマンスキー役の俳優がちょっと浮いている感じで、本国版の方が良いなと思った。それ以外は、どれもちゃんとイメージを損なわない俳優を選んでいると感じた。
長い割に無駄のないシーンが次ぎ次ぎに続くという、フィンチャー・ワールドの持ち味が十二分に生かされた本編、2時間38分、時間のたつのも忘れて没頭してしまった。さて、一つだけ気がついた事。映倫のコード(R15+)に引っかかるのか、劇中のベッド・シーンで例によってボカシがけっこう入っていたので興ざめしてしまった。こんなところにボカシ入れる必要があるのか? これでは国内版を買う気が失せてしまう。なんとも無粋なことだ。