足木敏郎、中日ドラゴンズ渉外担当補佐、と言うより元広報にして通訳。この名前を聞いてピンと来るアラフォー世代以上のドラゴンズファンは多いと思う。本書は、最近まで中日スポーツにて連載されていたモノ。連載中から単行本化されたら読んでみたいと思っていたので早速購入した。
53年、豊川高校から当時の名古屋へ入団、僅か2年の選手生活から以後トレーナー、マネージャー、広報、渉外担当と次々と裏方を経験しての57年間。一時身を引かれた後、今日もなお職員として籍を置いている正に中日球団の裏の裏まで知り尽くした人の話だけに読み処が満載。現役生活唯一の1軍出場時の何ともユニークな体験から始まって、27歳で一から始めた語学勉強から通訳にまでなった事や初の外国キャンプ滞行に水原茂と主砲江藤の確執、更にあわや放棄試合の顛末に黒い霧事件まで多彩な逸話が語られる。
杉下茂、江藤慎一、権藤博、森徹、中利夫、高木守道、小川健太郎、鈴木孝政、山本昌弘ら球団史に残る名選手たちも登場するが、やはり興味深いのは、広報、渉外担当時代でのドビー、マーシャル、マーチン、デービス、モッカ、ゲーリー、ブライアント、ゴメスら外国人選手たちの逸話の数々。取っておきの話も披露され、例えば阪神のバースや西武のデストラーデらも、実は獲得リストに挙げ入団寸前まで行っていたなど驚くべき事実も明かされる。
輝かしい成績を残した者、指導者で名声を博した者多かれど、僅かな現役生活と地味な裏方一筋で、これほどファンの間で知名度がある人物は稀だ。その言外に窺える努力家ぶりと謙虚さ、誠実さだからこそだと思う。
ドラゴンズ・ファンなら懐かしくなる事請負の1冊だ。