知り合いのつてで、ローマの中華料理店で働くために香港からやって
来たタン・ロン(ブルース・リー)。店のオーナーであるチェン(ノラ・ミャオ)
が、立ち退きを迫る地元マフィアに対抗するために、武術に長けたロン
を雇ったのだ。チェンを始め、店の従業員も、呑気で頼りなく見えるロン
の武術の腕を疑っていたのだが、マフィア一味を鮮やかに蹴散らすの
を見て以来、ロンに全幅の信頼を置くようになる。しかし、その日を境
に、マフィア側は、より強い刺客を送り込むようになり…。
ゴールデン・ハーベストと共同で、コンコルド・プロダクションを設立した
ブルース・リーが、初監督に挑んだカンフー・アクション作品。脚本、武
術指導も担当していることから、リーの人生哲学、思想が凝縮されて
いる。『
燃えよドラゴン [Blu-ray]』の大ヒットにあやかって、米国の初
公開時には、続編を匂わす” Return of The Dragon ”のタイトルで公
開された。
ローマに着いたばかりの香港から来たナイーブ(世間知らず?)な青年
が、カルチャー・ギャップに驚く(レストランで数種のスープを頼んだり、
娼婦に誘惑されたり…)のをコミカルに描く冒頭数分だけを観ると、安っ
ぽいコントのような連続で、正直、リーの初演出ぶりに疑問を感じざる
を得ない。ところが、それに続く、カンフー・アクション場面では、打って
変わって、殺気と緊張感に満ちた硬質の演出。そこに至って初めて、
前半のコミカルな描写は、戦いのシーンとの落差を出すための、リー
によって周到に計算された演出だったことがわかるのだ。後半からは、
得意のカンフー・シーンで押しまくり、有名なコロッセウムでの決闘ま
で一気に魅せてくれる。もちろん、雑な演出(セットも安っぽい)なども
なくはないが、全体としては、初監督とは思えない、引き締まった出
来の作品だ。
それにしても、リーの鍛え抜かれ、贅肉がそぎ落とされた肉体の美し
さはどうだろう。西本正(=賀蘭山)のキャメラ(照明も)が、一番効果的
に見えるようにリーの肉体、筋肉を捉えているのだが、まさしく動く彫
刻のよう。無駄がなく、殺気に満ちたカンフーの動きは、今さらながら、
武術を英語でMartial Artsと呼ぶのが納得できる、芸術そのものだ。
リーの数少ない出演作の中でも、これだけ肉体が画面に映える作品
はないだろう。
本Blu-rayは、2005年にユニバーサルから発売されていたDVD同様、
香港Fortune StarのHDテレシネ・マスターを使用したもの。残念な
がら、時代を考慮しても、画質は良好とは言えず、冒頭のローマの空
港から市内アパートへ行くまでのシーンでは、終始、フォーカスが甘く、
登場人物の表情がわからないという有様。その他のシーンでも、カラ
コレ(=色補正)が雑なのも気になる。もちろん、これは、35mm原版の
状態の悪さが原因なので、今後、より良好な35mmデュープ・ネガ、
もしくはマスター・ポジなどが見つからない限り、今以上の画質は望
めそうもない。音声も、7.1chリミックスだが、いかにも音を付け加えた
という感じでバランスが悪い。特典には、サモ・ハンなどを始めとする
香港映画人のインタビューとスチル・ギャラリーが収録。
技術的に言えば、間違いなくHD画質ではあるものの、実際の画質
の印象としては、SD DVDとの劇的な差は感じられないので(大画面
やプロジェクターでは別)、すでに、ユニバーサル盤DVDを持っている
方は、買い替える必要はないかもしれない。