この巻には名作「さようなら、ドラえもん」「帰ってきたドラえもん」が収録されています。
感動の別れを描いた後に再会を描く、というのは実力のある漫画家であっても、なかなか難しいことですが藤子先生はその難業を見事に成し遂げました。
のび太にとってドラえもんとは、基本的に愚痴を聞いてもらったり道具を出してもらう「頼れる存在」であり「さようなら〜」では、その依存心への決別が描かれました(これは以前に描かれた最終回「ドラえもんがいなくなっちゃう!?」と同様のコンセプト)。
藤子先生の偉大なところはここからで、続けて次の月に描かれた「帰ってきた〜」は、のび太の表情変化が最初から最後まで秀逸な傑作となっています。特に、ジャイアンとスネ夫に道具で報復した後の空虚な笑いが消えていくところなどは、素晴らしい描写力としか言いようがありません。ここで、のび太にとって、ドラえもんが「頼れる存在」としてだけではなく、ただそばにいてほしい「親友」でもあったということがひしひしと伝わってきます(ここを履き違えると『先月の涙は何だったの!?』ということになり白けてしまいます)。この回で使われる道具は、何でもありのとんでもない薬ですが、のび太が求めていたものは「道具」ではなく「ドラえもん」なのだ、というコンセプトを考えると、道具の効果にとやかく言うのは野暮というものでしょう。
上記のエピソードに象徴されるように、巻が進む(年代が新しくなっていく)ごとに、SF小話的エピソードが主の「ドラえもん」に、ストーリー志向の作品が目立ってくるのも読んでいて興味深い発見です。