まるで鳥の羽で軽く触れられるような感触。「亜麻色の髪の乙女」。
和音の響かせ方、間の取り方、テンポの設定、タッチの選択、
そして彼の透明感あふれる音色。
どれが変わってもこの曲の印象は変わってしまうだろうという
ぎりぎりのバランスを持っている。そう作られている。
これこそ、感覚と思考が同一地平にある世界だ。
他のどの曲についてもそれは言える。
では、神経質でピリピリしているのか?それは感じない。
曲に対する愛情が伝わってくる。ドビュッシーにしかない
詩情を尊敬している。そんな感じすらする。
ドビュッシーの描こうとした幻想あふれる情景や夢を、
ミケランジェリほどに再現できた演奏家は希有だったと思う。
コルトーやギーゼキングや、フランソワを知っていても。
(最晩年のアラウは凄いので別格扱い)
ミケランジェリの演奏は、硬質で透明で、あたかも
クリスタルで出来ているかのようだ。
しかし、そのクリスタルは奧に炎を秘めている。
それが、僕を引きつけて放さない力の源泉だ。