アメリカ、という善悪二元論でがんじがらめの社会では、その閉塞感から面白い作品が時々生まれる。
映画「アメリカンビューティー」も、「人生の勝者・敗者」という観点から生まれた面白い映画だったが、この「ドニー・ダーコ」も「社会の歯車に巧く乗った者勝ち」から外れはじめた若者の世界観が見事に表現された傑作である。色々な意味で、アメリカンビューティーよりも面白く、濃い内容である。
多感な高校生のドニーは、偽善に満ちたこの世界に疑問を抱え、自分の周りの流れに困惑し孤立している。その孤立感から心的問題を抱え世間で問題児扱いされているドニーは、毎晩睡眠中に彼を呼ぶ声に誘われ夢遊病となる。ある夜、「声」の正体である人間大の銀色のウサギが現れ、ドニーに「あと28日で世界が終わる」と告げる。
この映画はその最後の28日間の彼の行動を追っていくのだが、物語の内容、ストーリー展開、映像、キャスト、音楽とどこを取っても素晴らしく、重くなりがちな内容がユーモアを交えて語られ、衝撃的なラストには不思議な安堵感さえ漂う。
村上春樹の「羊の冒険」「ダンスダンスダンス」「海辺のカフカ」あたりを映画化したらこんな感じになるのではないだろうか?
タイムトラベルだとか、リバースムービーだとかで語られるが、基本的な内容・テーマは「偽善に満ちたこの世界で、我々は予め決められた歯車(運命)に従い生きているのだろうか?もしそうなら、その運命(の方向性)を変えることは可能なのか?」である。最後の28日間で、ドニーはこの疑問に対する答えを探そうとする。登場人物が謎のように発するキーワードは、驚くほど村上春樹の本で使われる言葉に似ている。
少なくとも2度観る事をオススメする。1回目で内容とストーリー展開は掴めるのだが、2回目を観るとこれらのキーワードが深い意味を成し、物語がより理解できて面白みも増すと思う。