文豪ドストエフスキーの名を冠した表題作を始めどれも文学的で、性への渇望や他人への嫉妬・猜疑心など人間のいやらしい部分を浮き彫りにし、生きる意味を問いかける問題作ばかりだ。どうしようもなく露悪的な表現の奥底に、崇高さや真実が隠されている(ような気がする)。
「ドストエフスキーの犬」「ザーメン」「ありふれた旋律」は、読後本当にやり切れない気持ちになる。「赤い海」は、自分たちの家系に脈々と流れる“狂人を生む血”に、必死で抗う兄弟を描いた作品。座敷牢に入れられた、“普通ではなくなってしまった”一番上の兄貴のイメージは強烈。
「羽がはえた漫画少年」はジョージ秋山流の漫画家残酷物語なのですが、これはもう残酷を通り越してる。多々良青年は最後、ああするよりほか仕方がなかったのか…。「糞虫忍法帖」は本書ではちょっと浮いてる忍者劇画だが、これも娯楽活劇ではなく、“糞虫”と呼ばれる口のきけない忍者が悟りに至るまでを描いたものです。無常感に満ちた、余韻の残る作品。
「慙愧」はよく復刻できたなと驚かされる内容。「30年」は、ラフスケッチみたいな絵の8頁の無言劇。名作とかじゃないが、こんなので人生の悲哀を表現できてしまうってのはすごい。
誰もが幸せならこういう本は必要ないのだろう。だが気持ちが晴れなかったり、何で生きてるのかわからなくなった人は、本作を読んだ方がいいと思う。漫画マニアだけでなく、ぜひ悩みの多い若い人たちにも読んでほしいです。
「30年」
「ザーメン」
「赤い海」
「糞虫忍法帖」
「ありふれた旋律」
「羽がはえた漫画少年」
「慙愧」
「ドストエフスキーの犬」
ジョージ秋山インタビュー