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最も参考になったカスタマーレビュー
47 人中、41人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
時代の書,
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レビュー対象商品: ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫) (文庫)
本書の作者が製作したNHKスペシャル「民族浄化」は、国際政治においていかに「PR」の役割が重要かということを知らしめる作品であり、非常に衝撃的でした。本書はそのノベライズ版かと思い何気なく手にしたのですが、その内容はテレビ放送を上回るものでした。NHKスペシャルでは紛争の一方当事者であるセルビアが一方的に「悪」のレッテルを貼られていく過程を淡々と描いていましたが、本書ではこの「PR」戦争に携わった多くの登場人物の内面にまで踏み込んでいます。そのため、テレビ放送ではこのプロセスのえげつなさが印象的でしたが、本書ではさらに「PR」というものの重要性を軽視した者がいかに多くの対価を払わされるかという点に背筋が寒くなる思いをしました。具体的には、いち早く「PR」の重要性を悟ったボスニア側と、優れたコミュニケーターの素養を持ちながらその重要性を軽視し、「いつか誰かがわかってくれる」という甘い認識しか持ち得なかったミロシェビッチとセルビア側とのその後の未来のあまりの落差の大きさです。確かに、ボスニアからコソボへと続く一連のユーゴ紛争においてミロシェビッチおよびセルビアのとった対応は「悪」のレッテルを貼られてもやむをえない点が多々あります。しかし、ミロシェビッチ個人についてはともかく、セルビアの国民の支払わされた対価は不当に大きすぎると言えるでしょう。 翻って、国際舞台において日本はボスニアかセルビアのどちらかに属するかと考えた場合、残念なことにセルビアだと言わざるを得ないでしょう。本書でも軽く触れていましたが、政治に限らずビジネスの現場においても「いちいち言わなくてもいつか誰かがわかってくれる」というのが日本人の大多数の認識です。わたしはアメリカでしばらく暮らし、その後外国人と仕事をする機会がありましたが、彼らの「日本」に対する無知ないし誤解によって生じる不利益に直面したことは一度や二度ではありません。それを正すためにそれこそ個人で日本を「PR」をする羽目になった経験を持つ人も少なくないはずです。本書を読んで、その苦い記憶が蘇ってきました。 本書が大きな反響を呼び、読者に強い説得力を持ったのはその内容もさることながら、日本のノンフィクションにありがちな単純な善悪でこの「PR」活動を定義しなかった点にあるような気がします。もしこれをやってしまうと、それこそ批判の大きいアメリカの単純な善悪論と同じ陥穽にはまることになるからです。昨今の中韓両国との対立がいい例ですが、日本もこの「PR」戦争のまさに渦中にあります。このような事実を容赦なく突きつけ「PR」の重要性を語る本書は、出版当時以上にその時代性を増しているのではないでしょうか。
12 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
広報という名の武器,
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レビュー対象商品: ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫) (文庫)
ボスニア紛争の時に行われた凄まじい広報戦略について解説したものです。
著者はNHKのディレクターで、元々は2000年のNHKスペシャルを下地にして書かれています。 本書では欧州の小国ボスニアの外務大臣が、財政難からたった一人でアメリカの広報戦略会社のスタッフ、ハーフ氏と出会うところから始まります。当時ボスニアは隣国のセルビアと紛争を抱えていて窮地に陥っていました。PR会社のハーフ氏は、外務大臣にマスコミ戦略について詳細なレクチャーを施し、アメリカを中心に、ヨーロッパ、国連、世界の世論を自分サイドに引き寄せるように様々な戦略を実行します。 その結果、見事に国際世論を動かしてセルビアを国連除名にし、国際的に孤立させて、紛争を有利な方向に導くことに成功します。 本書で見る限り非は双方にあり、また国力はセルビア側が有利だったにも関わらず、本来なら負けるはずの戦争を有利に導く、そのハーフ氏の手際は鮮やかで、まるで一流スポーツ選手のパフォーマンスを見るようでした。 しかし読んでいて戦慄させられたのが、このPR会社の起こす「演出」です。 日本では「空気」と呼ばれますが、これを非合法スレスレな手段を用いて自身に有利な流れに誘導すれば反対派がこの流れを逆らうのはほとんど不可能で、時に社会的に抹殺される危機すらあります。それは戦時中の日本で国民が戦争反対を唱えること、また小泉旋風時にエコノミストが郵政民営化反対を唱えるようなものなのでしょう。実際に紛争当事者とは無関係で中立的な立場のカナダ軍人が、この人特有の誠実さでボスニアに不利な発言を行い、ハーフ氏に「流れを変える危険性がある人物」と判断されて政治的な抹殺に追い込まれています。 日本人は伝統的に自己主張が苦手で「正義は最後には報われる」とか「男は黙って・・・」という精神が今でも強く残っていますが、海千山千の虎狼が蠢く国際社会の中では、こうした性善説に拠って立つことはかなり不利な立場に立たされることとなってしまうでしょう。 そして本書で登場するPR会社はあくまで情報・PRに関してのみの活動であり、一部がグレーゾーンではあってもリーガルな範囲内に留まっていますが、もしこうした活動を大国が大きな資金を背景に行い、更に暗殺や工作などの非合法な実行力を伴ったなら、国力が弱くPRに不慣れな小国がそうした流れを覆すのはほとんど不可能だろうと思わずにはいられませんでした。 本書は当事者の数多くの人物に実際にインタビューを行い、PR会社の内部資料なども詳細に検討した上で執筆されていて、NHKの時間とコストを十分にかけた丁寧な取材には驚かされました。しかも文章が非常に読みやすく、読了まであっという間です。また白眉なのが、著者自身がNHKといういわばPRを行う側にあり、それでいて中立な姿勢を保ちつつ全体を冷静に俯瞰していることだと思います。 こうしたPR会社の暗躍はこのような国際社会の大舞台に関わらず、小は企業CMから一国の参議院選挙まで様々な場所に活躍の場があります。どこかで仕掛けられた流れに安易に流されないようにするためにも、本書を読む価値は大きいと思います。
15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
広報(PR)の持つ力を知る上で貴重な本,
By Ray (東京都渋谷区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争 (単行本)
アメリカの独立系PR会社であるルーダー・フィン社が、いかに広報活動を通じて世論を操作していったかを赤裸々に描いた本。正直、一介のPR会社がよくここまで政府の中心に入り込み、また政府もそれを黙認していたかというのが驚き。アメリカには「必ず当選させます」という選挙などに特化したPR会社があるなど、この分野がかなり進んでいる。これを読むと、新聞やテレビで言っていることがいかに偏っているか(偏っている可能性があるか)がよくわかる。ただ、振り返って日本であまりPRが普及しないのは、本書で説明されている米国の理由とは若干異なり、現在の日本の主なPR会社が「クライアントの決めた方向性に従って、メディアの露出を取ってくる」という域を出ておらず、本書で語られているようなクライアントの根本的な戦略や方向性についてまで踏み込めていないのも、大きな理由の一つであると推測される。本書に登場するルーダーフィン社のような、クライアントが頼ることができる、プロフェッショナルとしてのPR会社が登場しないと、日本でPRはマーケティングの手段にはなりえないのではないだろうか? ブランド構築の観点から広報の重要性を説いた、「ブランドは広告ではつくれない(翔泳社)」と合わせて、広報に興味の有る方全てにお勧めの本。
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